基本的な考え方
海をルーツに140余年の歴史を持つ当社グループは、かけがえのない自然の恵みとその生命力に支えられて成長を続けてきました。
世界の人口増加と新興国の経済発展などによって、魚食需要は今後も増加することが確実です。需要への対応と水産資源の保全という要求に応えるため、事業活動を通じて持続可能な海洋環境の保全に貢献していきます。
2025年度の進捗概要
中期経営計画(2025年度~2027年度)KGI・KPI
| マテリアリティ | 生物多様性と生態系の保全 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| KGI(2030年のありたい姿) | 取扱い水産資源について、資源枯渇リスクがないことを確認している | ||||
| KPI | 取扱水産物の資源状態確認率(グループ全体) | 電⼦トレーサビリティ方法の確⽴ | 生物多様性リスク評価実施(国内グループ) | 養殖場の認証レベル管理の実施(国内グループ) | |
| ターゲット | 2030年度目標 | 100% | ー | - | - |
| 2027年度目標 | 評価不明⿂種の取扱い方針策定 | 一部⿂種で運⽤開始 | TNFDに基づくシナリオ分析拡大実施 | グループ内全養殖場で管理体制の構築 | |
| 進捗 | 2025年度実績 | 第3回水産資源調査実施 取扱水産物の資源状態確認率 84.1% |
一部魚種で実証実験を実施 | 2024年度実施内容 の社外開示 |
2つの養殖場で再監査 改善推進 |
| 自己評価 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | |
| コメント | 第3回水産資源調査を実施し、計画通りに進捗 | 国内外のステークホルダーと協働を通じて実証実験を行い、計画通りに進捗 | TNFDに基づくシナリオ分析結果および生物多様性リスク評価結果を社外開示し、計画通りに進捗 | 2つの養殖場で再監査 改善推進し、計画通りに進捗 |
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| 責任部署 | Umios㈱サステナビリティ戦略部 | ||||
Umiosの取組み
水産資源調査
Umiosグループは2019年度を対象とした第1回調査以降、継続的に水産資源調査を実施しています。2025年度には、2024年度に当社グループが調達した水産物(飼料原料を含む)を対象として第3回調査を実施しました。
Umiosグループにとって、水産資源は重要な事業基盤です。一方で、世界的な水産物需要の増加や海洋環境の変化に伴い、水産資源を取り巻く環境は大きく変化しています。当社グループは、持続的な事業成長と安定した原料調達を実現するため、自社が調達する水産物の資源状態を継続的に調査し、調達リスクの把握と管理に取り組んでいます。水産資源調査は、生物多様性への配慮だけでなく、事業継続性を高めるための重要な経営活動として位置付け、当社グループがどのような資源に依存して事業を行っているのかを把握し、今後の資源管理や調達方針の高度化につなげることを目的としています。
調査目的
- 当社グループの調達水産物の全体像把握(魚種、エリア、数量など)
- 調達天然水産物の資源状態・管理状態の評価
- KGI達成に向けて、課題の抽出と対策の検討
調査方法
| 実施年度 | 第1回(2020年度) | 第2回(2022年度) | 第3回(2025年度) |
|---|---|---|---|
| 対象年度 | 2019年度 | 2021年度※1 | 2024年度※1 |
| 調査対象 | グループ48社 (国内31、海外17) |
グループ42社 (国内25、海外17) |
グループ38社 (国内25、海外13) |
| 分析主体/ 参照データ |
SFP※2/FishSource※3 | SFP/FishSource | |
| 評価方法 | 当社独自の基準 | ODP※4手法の基準 | |
| 評価基準 | ①資源状態に心配なし :FishSourceの5つのスコアが平均6以上 かつ、スコア4が6以上 ②資源状態に心配あり :FishSourceの5つのスコアが平均6未満 または、スコア4が6未満 ③データ不十分 :FishSourceの5つのスコアに欠損があり 評価ができない場合 |
①良く管理されている :FishSourceの5つのスコア※5がすべて8以上 ②管理されている :FishSourceの5つのスコアがすべて6以上 ③管理状態に改善が必要 :FishSourceの5つのスコアに6未満がある ④評価不可 :FishSourceの5つのスコアに欠損があり 評価ができない場合 |
|
- ※1国内と一部海外は4月~翌3月、その他海外は1月~12月
- ※2持続可能な漁業のためのパートナーシップ。FishSource※3を管理する米国のNPO。正式名称はSustainable Fisheries Partnership
- ※3各国行政機関の水産資源情報をもとに開発された国際的な水産資源に関するデータベース
- ※4Ocean Disclosure Project。SFPにより運営される、水産物調達の透明性を高めることを目的とした情報開示プラットフォーム
- ※5①管理戦略、②管理者のコンプライアンス、③漁業者のコンプライアンス、④現在の資源状態、⑤将来の資源状態 各10点満点
第3回調査結果
当社グループ全体の水産物調達状況(()内は前回調査結果)
当社グループ全体の2024年度の調達実績は、原魚換算で約177万トン(170万トン)となり、前回調査に対して7万トンの増加となりました。これは2024年の世界の漁業・養殖水産物生産量の約0.8%に相当し、調達魚種は天然魚366種(337種)、養殖魚81種(83種)におよびました。また、飼料原料由来を中心に分類不可が約7万トン(12万トン)となり、前回調査時から5万トンの削減となり、改善はしたものの依然大きな課題と認識しています。
天然水産物の評価結果
天然水産物の資源状態/管理状態を評価するため、SFPのODP手法にもとづいた分析を行いました。その結果、Umiosグループの取扱天然水産物の内、47%(44%)にあたる約70万トン(60万トン)が「良く管理されている」と評価され、このうちの68万トン(60万トン)がスケソウダラを中心とした、持続可能であると認証された漁業で漁獲されたものであることがわかりました。また、24%(27%)にあたる約35万トン(37万トン)が「管理されている」と評価されました。一方で、14%(15%)にあたる約21万トン(20万トン)が「管理状態に改善が必要」、14%(14%)にあたる計約21万トン(19万トン)がデータ不足やFishSourceに登録のない漁業のため「評価不可」および「未登録漁業」となりました。
前回調査時に比べ、「良く管理されている」が10万トンの増加、「管理されている」が2万トンの減少となり、適切に管理がされていると評価された天然水産物の調達比率は前回調査時同様の71%となりましたが、内訳としては管理状態がより良好な天然水産物の調達比率を3%伸ばすことができました。一方、「管理状態に改善が必要」が1万トンの減少、「評価不可」が2万トンの増加となり、「管理状態に改善が必要」と評価されたものは1%の削減となりましたが、これを受け管理状態を把握できている天然水産物は調達全体の85%(86%)となりました。天然水産物か養殖水産物か分類ができない対象約7万トンを含めると、調達水産物の84.1%が養殖または資源状態の把握ができている天然水産物であり、前回の81.8%から着実な改善が見られました。
魚種別調達重量
北米での資源アクセスを強化したスケトウダラの取扱いが最も多く全体の39.4%、次いでキハダ7.2%、マイワシ6.3%となり、上位3魚種で全体の53%、上位10魚種では全体の72%を占める結果となりました。
管理状態別魚種構成
「良く管理されている」:79%を占めるスケトウダラを筆頭に上位10魚種で94%を占めています。
「管理されている」:マイワシとキハダで約半分、上位10魚種で94%を占めています。
「管理状態に改善が必要」:カツオ、シロザケ、タイセイヨウサバ、キハダで約半分、上位10魚種で77%を占めていますが、残る約23%の内訳は60種にもわたりました。
「評価不可または未登録漁業」:すりみ原料となるタチウオ、エソ類、イトヨリダイで計15%、上位10魚種では半数に満たず、299種におよぶその他の魚種が50%以上を占めています。
認証水産物
GSSIで承認された水産認証由来の天然水産物調達の大部分がMSC認証となります。北米およびロシア周辺海域で漁獲されるスケトウダラがその8割を占め、その他はマダラ、ホタテガイ、カツオなどの上位10魚種で95%となりました。GSSIで承認された水産認証由来の天然水産物調達重量はMEL認証のカツオ167トンを含め計67.6万トン(60.2万トン)となり割合にして45.7%(44.2%)となり、前回調査時に比べ7.4万トン、1.5%増加しました。また、その他の認証として、飼料原料においてマリントラスト認証由来の水産物も約2万トンの調達がありました。
調達方法別の評価結果
自社グループによる漁業および水産資源へのアクセス権を保有している「自社操業およびアクセス権保有」は天然水産物調達の約1/4を占め、その大部分で適切な管理がなされていることが分かった一方、天然水産物調達の3/4を占める「外部調達」においては「管理に改善が必要」や「評価不可/未登録漁業」の割合が多く、大きな課題であると認識しています。
絶滅危惧種
世界最大規模の国際的な自然保護機関であるIUCN(国際自然保護連合)により絶滅の危機にある野生生物を分類・評価したIUCNレッドリストと照らし合わせた結果、調達した水産物の中に、CR(深刻な危機/絶滅危惧IA類)、EN(危機/絶滅危惧IB類)、VU(危急/絶滅危惧II類)に該当するものが、天然水産物でそれぞれ3種、9種、11種含まれることが分かりました。また、養殖魚種に関しても、CRで1種、ENで3種の該当がありました。前回調査時に種名までの特定ができず詳細の把握にまで至らなかったサメ・エイ類において複数種がCR、EN、VUにまたがり該当するほか、一般的にアカウオとして流通するチヒロアカウオや天ぷらなどに利用されるアオギスがEN、マグロ類ではともに刺身で食されるミナミマグロがEN、メバチがVUに該当しています。その他、すり身の原料となるイトヨリダイや干物などに利用されるニシマアジなどもVUに該当することが分かりました。養殖水産物では、アカアワビがCR、アメリカウナギ、ニホンウナギ、ミナミマグロがENに該当しています。
今回の調査結果を受け、Umiosグループ水産物調達方針に加え、有識者との意見交換などを行いながら、絶滅危惧種に該当する水産物の調達についても方針の策定を検討していきます。
PDFファイルが別ウィンドウで開きます絶滅危惧種の取扱い一覧
KGIの達成に向けての課題と対応策
今回の調査を踏まえ、サプライヤーとの対話や情報収集を通じてトレーサビリティの向上に取り組むとともに、FishSourceの評価情報充実化にも取り組んでいきます。当社グループは、資源状態の良し悪しだけでなく、取り扱っている水産物の資源状態・管理状態がどのような状況なのかを把握することが適切な資源管理の出発点であると考えています。今後も調査精度の向上に取り組み、資源状態確認率100%を目指します。
課題1)分類不可水産物の解消
飼料メーカーなどからの詳細情報の入手、調達水産物の由来の把握に努めます。
課題2)未登録漁業や評価不可漁業の削減、管理状態の把握率改善
該当漁業について、公的な資源調査の実施有無を管轄行政などに確認するなどし、資源状態の把握に努めます。また、重要魚種についてはSFPと連携しFishSourceのデータベース拡充にも取り組みます。
資源状態の把握ができる魚種の調達比率を高め、環境価値棄損リスクおよび調達リスクの低減に努めます。
課題3)絶滅危惧種の取扱いについての方針策定
生物多様性に悪影響を及ぼさない持続可能な事業運営を担保するため、絶滅危惧種に該当する種の調達に関して、科学的な根拠に基づく方針を定め運用を開始します。
当社グループは、水産資源調査を単なる情報収集活動として終わらせるのではなく、事業活動の改善につなげることを重視しています。調査結果を社外へ開示するとともに、課題を調達部門およびグループ会社へフィードバックし、改善に向けた話合いを行っていきます。調達部門およびグループ会社自らが、取り扱う魚種の資源状態および評価不能となっている魚種をしっかりと把握し、それぞれの対応方針に落とし込んでいくことが重要と考えています。今後も調査、評価、改善のサイクルを継続することで、評価不能魚種の削減、資源状態の確認率向上、調達リスクの低減を図り、企業価値向上につなげていきます。
生物多様性リスク評価実施
当社グループは自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が2023年9月に公開したフレームワークに基づき、事業と自然との関わりを評価しました。詳しくはTNFDページをご覧ください。
TNFD提言に基づく開示北米・スケソウダラ資源へのアクセス強化
当社グループは、持続可能な水産物調達力のさらなる強化のため、2022年2月、米国・Icicle(アイスクル)社よりスケソウダラの加工施設および漁船9隻を譲り受け、北米ベーリング海におけるスケソウダラ資源へのアクセスを一層強化しました。
漁獲枠のように天然水産資源に関与できる権益は、世界的に限られたもので、新たな取得には 相当な困難が伴います。今回のアクセスシェアの追加により、ベーリング海という広大な海域で、スケソウダラという潤沢な資源量を持ち、かつサステナブルな魚種へのアクセスが強化されることになります。具体的には、ベーリング海のスケソウダラの漁獲枠において一般枠(原住民に与えられる漁獲枠を除く、一般に企業が利用できる漁獲枠)全体で約26%のシェアを獲得いたしました。また、スケソウダラは他のたんぱく質と比較して、気候変動に配慮したたんぱく質であることが報告されています。サステナブルなたんぱく質として、人口増加、健康志向などの面から、世界的に需要は堅調ですが、フィーレやすりみなどさまざまな形態でより一般消費者のニーズにお応えすることが可能になります。
PDFファイルが別ウィンドウで開きます詳細はこちらをご確認ください。
養殖場の認証レベル管理の実施
当社グループでは、ASC認証基準を参考にした独自の管理基準に基づき、養殖場の認証レベル管理を実施しています。2025年度は篠川漁場および串本事業所で自己監査を実施し、水質・底質モニタリング、生物多様性への影響評価、養殖魚の健康管理、脱走防止対策、地域社会との共生に関する取り組みを確認しました。脱走防止については、管理計画の運用、網の定期点検・補修、カメラを活用した設備確認、記録管理などを実施しています。今後も継続的な評価と改善を重ね、持続可能な養殖事業の実現に取り組んでいきます。
カンパチ、ブリにおける持続可能な養殖認証(ASC認証)取得の取組み
Umios AQUA久根津漁場は、2019年7月にカンパチの養殖において世界初となるASC認証を取得し、2020年5月から本格出荷を開始しました。また、Umios AQUA上浦漁場ではブリの養殖において2018年4月にASC認証を取得しており、2019年2月から本格出荷を開始しました。引き続き、水揚げ→活魚輸送→Umiosの指定委託工場でのフィレ加工→量販店での販売という一貫したバリューチェーンにてお客さまの元へお届けしていきます。
※2022年4月1日(金)、増養殖事業を営むグループ6社を統合し、2つの会社に集約、Umios AQUA(株)、Umios Marine(株)(当時・マルハニチロAQUA(株)、マルハニチロMarine(株))が発足しました。Umios AQUA(株)(本社:鹿児島県鹿児島市)は、九州地方の(株)桜島養魚、(有)奄美養魚、(株)アクアファーム、(有)玄海養魚の4社を統合、Umios Marine(株)(本社:和歌山県串本町)は、紀州地方の(株)串本マリンファーム、(有)熊野養魚の2社を統合しました。
持続可能な水産物の主流化に向けて
当社は、マテリアリティ「健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供」の2030年のありたい姿として、「健康価値創造と持続可能性に貢献する食品トップ企業としてブランドを確立している」を掲げています。その実現に向けて、社内で「健プロ」と呼称する取組みを推進し、認証水産物の売上比率向上をKPIに、展示会やカタログを通じた情報発信に取り組んでいます。健プロでの活動を通じて、持続可能な水産物の主流化に向けて業界を牽引する役割を積極的に担っていきます。詳しくは健プロページをご覧ください。
健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供プロジェクト(”健プロ”)の取組み
水産物電子トレーサビリティへの取り組み
当社は水産物の流通におけるトレーサビリティの電子化に向けた取り組みを推進しています。現在の中期経営計画では、2027年度までに一部の魚種での電子トレーサビリティの運用をKPIとしており、この取組の一環として、国内外のさまざまなステークホルダーと協働し、実証実験を積み重ねながら社会実装を目指しています。
2025年4月~5月には、グループ漁業会社、仲卸業者、IT企業と協働し、電子トレーサビリティシステムの実証実験を実施し、流れの概要と取り組みの意義を確認しました。
続く2026年2月には、富士通株式会社と共同で、水産物の流通情報を可視化する電子トレーサビリティシステムの実証実験を実施しました。Umios Marine株式会社 串本事業所(和歌山県)で養殖するクロマグロを対象に、株式会社オークワ 和泉小田店(大阪府)にて、購入した消費者が養殖場から販売店までの流通情報をスマートフォンで確認できる仕組みを構築し、社会実装に向けた有効性を確認しました。
WWFとの協働~ペルーにおけるマルアナゴのトレーサビリティ~
当社グループのSakana del Peru社は、WWF(世界自然保護基金)がペルーで推進するトレーサビリティ確立の取組みに参画し、GDST基準に準拠した電子トレーサビリティアプリ「TrazApp」の自社のマルアナゴ漁業への導入を進めています。漁業者が漁船上で入力する漁獲情報(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)は、行政機関や研究機関、加工場など関係者間で共有され、IUU漁業に関わっていないことを証明できる体制の構築につながっていきます。
同社では、こうした電子的トレーサビリティ体制の構築に加え、資源管理の強化に向けた取り組みも進めてきました。これらが評価され、2026年5月、Sakana del Peru社のマルアナゴ筒漁業がペルーで初めてMSC漁業認証(※)を取得しました。今後は、ペルーでの漁獲・加工情報を日本国内の流通過程まで引き継ぐ実証を進め、サプライチェーン全体でのトレーサビリティ確立を目指します。
※自然環境や資源の保護に配慮した持続可能な漁業の認証制度を管理・推進する国際的な非営利団体であるMSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)の厳格な認証規格を満たした漁業に与えられる認証
業界のフルチェーントレーサビリティを牽引すべく、様々なステークホルダーとの共創を通じた取組みを今後も加速させていきます。
その他の取組み
※社名は実施当時のものです