#3

〈包材とリサイクル〉の物語

食を届ける企業として、私たちが今できることを

サステナビリティ戦略部環境課の岩上と王
食べものを届けたあと、そこには何が残るのでしょうか。

たとえば冷凍食品を包んでいたプラスチック包材。食事の準備が終われば、普段はごみとして捨てられてしまうものです。しかし、その包材をきれいに洗い、もう一度集めることができたなら。さらに、それを新しいものへと生まれ変わらせることができたなら。食を届ける営みの先に、もうひとつの循環が生まれるかもしれません。

そう考えた私たちは、食品を届けたあとに残るプラスチック包材を回収し、新たな製品へとリサイクルする仕組みづくりを始めています。

舞台となったのは、横浜市金沢区の「金沢子ども食堂すくすく」。「フードバンクかながわ」を通じて届けてきた未利用食品の包材を回収し、トレーへとリサイクルする。完成したトレーを再び子どもたちに届けることで、自分たちが使い終えた包材がどのように資源としてめぐっていくのかを、肌で感じる機会を設けました。

フードロス削減、プラスチック資源循環、地域との関係、そして子どもたちへの環境教育。

これは、いくつものテーマが重なり合う、Umiosらしい取り組みのお話です。

食品を届けた、その先に残るもの

Umiosでは、2022年にプラスチック使用量削減プロジェクトを始動。2030年までにプラスチック使用量を2020年度比で30%削減することを目標に、サステナビリティ戦略部、開発部、生産企画部などが一丸となって取り組んでいます。

プロジェクトの主要メンバーの一人として関わっている、サステナビリティ戦略部の岩上綾真はこう語ります。

「プラ削減から始め、それと並行してリサイクルも進めないといけないという議論になり、2024年頃から、何かリサイクルできる案件がないかを探していました。そこで着目したのが、『PCR(ポストコンシューマーリサイクル)』という考え方です。消費者の手に渡ったあとのプラスチックを、どのように資源循環として回していくか。ペットボトルほど回収が一般化していない食品包材で、一からスキームをつくるのは容易ではありません。だからこそ、Umiosの知見を活かした独自の方法が必要でした」(岩上)

サステナビリティ戦略部環境課の岩上
サステナビリティ戦略部環境課の岩上


リサイクルの仕組みを新しくつくろうとしたとき、課題になるのは、どう回収するか。食品包材は、使い終われば家庭や店舗で捨てられてしまいます。しかも、油汚れや食品残渣が残りやすく、異物も混ざりやすい。ペットボトル飲料と違い回収ボックスを置けば資源として戻ってくる、というものではありません。

そこで鍵となったのが、すでに以前から良好な関係を築いてきた「フードバンクかながわ」への⾷品寄付でした。

Umiosでは、品質に問題はないものの、輸送時の箱の凹みなどで通常流通に乗らなくなった「未利用食品」を毎月寄付しています。その量は2024年度実績で、43トン(「フードバンクかながわ」以外への寄付も含む)にものぼります。

「フードロス問題の解決策として始まったこの寄付活動を、今回のプロジェクトとつなげられるのではないか。食品を届ける流れの中で、包材も資源として戻せるはずだと考えたのです」と、プロジェクトの中心人物である王媛媛は振り返ります。

サステナビリティ戦略部環境課の王
サステナビリティ戦略部環境課の王


食品を届ける。食べ終わったあとに包材が残る。その包材を洗って戻してもらい、リサイクルする。そして、できあがったものを子どもたちに手渡し、包材が資源として生まれ変わることを伝える。

フードロス削減のために始まった⾷品寄付の地域活動は、プラスチック包材の回収とリサイクル、さらには子どもたちへの環境教育へとつながるプロジェクトへと進化を遂げていくことになります。

洗って、戻す。手間の中にある参加のかたち

今回、実証実験に協力してくれたのは、「金沢子ども食堂すくすく」。ここで回収された約4キロの包材は、回収後に細かく破砕され、バージン材と混ぜ合わせることで、リサイクル材50%のトレーへと生まれ変わりました。

こちらがリサイクルによって生まれたトレー。5ミリ幅で破砕した包材が見える状態となっています
こちらがリサイクルによって生まれたトレー。5ミリ幅で破砕した包材が見える状態となっています


そして2026年4月5日、「金沢子ども食堂すくすく」で、このトレーのお渡し会を開催。完成したトレーを届けるだけでなく、子どもたちに向けた説明の時間も設けられました。

「子どもたちには紙芝居形式で、プラスチック包材が環境にどのような影響を与えるのか、そしてきちんと回収すればどのように新しいものへ生まれ変わるのかを伝えました。今回、子ども食堂のスタッフの方々には、包材を洗うという大変な作業をしていただきました。それが実際にどうなったのかを、目に見える形でお伝えするために、直接お渡しする場を設けたかったのです」(王)

「一通り説明したあと、子どもたちからたくさん質問があったことが本当にうれしかったです」(王)
「一通り説明したあと、子どもたちからたくさん質問があったことが本当にうれしかったです」(王)


並行して、社内回収の実証実験も進めました。まずは商品開発を行う拠点に協力してもらい、業務で発生する使用済みの自社製品のプラスチック包材の回収を行えるか、実証実験を行いました。その結果、普段の業務で忙しい中、社員にも協⼒してもらい、使⽤済みプラスチック包材を洗浄し、回収できることが⾒えてきました。

「2つの実証実験から、使用済み自社製品のプラスチック包材を問題なく回収できることが分かりました。一方で、油分の多い製品の包材はお湯で洗っても油汚れが落ち切らないものがあるという課題も見えてきました。包材は、集めればそのまま資源になるわけではないのです」(王)

これらの回収を通じて見えてきたのは、資源循環を進めるうえで避けて通れない現実です。同時に、なぜ洗って戻すのかを伝え、関わる人たちと目的を共有していくことの大切さも見えてきました。

「めんどくさい」の先に、自分ごとの循環がある

今後、Umiosはこの取り組みをさらに広げる可能性を探っています。ひとつは、「フードバンクかながわ」を通じて、他の団体やフードパントリーへ広げていくことです。

「フードパントリーとは、食料を必要とする家庭などに、食品を持ち帰る形で配布する場のことです。子ども食堂では、提供された食品がその場で調理されるため、運営に関わる人たちが包材を洗い、まとめて戻すことができました。一方、フードパントリーでは、食品は各家庭に持ち帰られ、洗った包材を持ち寄ってもらう形になります。より生活者に近い回収になる分、協力のハードルは上がると思っています。お手間をかけることになりますからね。けれど、その手間の中にこそ、資源循環を自分ごととして捉えるきっかけがあるのではないかなとも思っています」(王)

効率だけを考えれば、回収しやすい場所から、きれいな包材だけを集めるほうが簡単かもしれません。しかし、食品を受け取った人が、自分の手で包材を洗い、次の機会に持ち寄る。その小さな手間があるからこそ、「これはごみではなく資源なのだ」と感じるきっかけが生まれるのではないか、と王は言います。

もちろん、このスキームを広げていくには課題もあります。岩上は、今後を見据えてこう話します。

「対象範囲を広げていった際に、リサイクルできる品質のものが本当に集まるのか。もしくは多少汚れが残っていてもリサイクルできるリサイクル業者を探せるか。そして、自治体との確認をどう進めていくのか……など、乗り越えなければならない課題はたくさん出てくるでしょう。ただ、ペットボトルの回収も、発泡スチロールのトレー回収も、最初から当たり前だったわけではありません。まずはこのスキームをつくり、実証していくことが大切だと思っています」(岩上)

誠実なチャレンジを、未来の当たり前に

冷凍食品のプラスチック包材を「資源」として扱う。その視点は、まだ社会の中で当たり前になっているとは言えません。だからこそUmiosは、小さく試し、課題を見つけ、協力してくれる人や団体を増やしながら、少しずつ仕組みを育てていこうとしています。

「社外にこれから広めていくにあたっては、同じ仲間を増やしていかないといけないと思っています。冷凍食品やプラスチック資源に関する団体、いろいろなイニシアチブがあります。そういった横の連携を取りながら、一緒に回収しませんか、と広げていけたらと思います」(岩上)

王は、この取り組みを、フードロス削減の先にある新しい意識づくりとして捉えています。

「もともとフードロス削減に関しては、社員の中に『もったいない』という意識がありました。なぜ、この食べられる食品を捨てなければいけないのか。その感覚があったからこそ、社内でもフードロス削減の取り組みが進んできたのだと思っています。ぜひこの『食品がもったいない』という感覚を、『プラスチックの包材を捨てるのはもったいない』というふうにも広げてほしいと思っています」(王)

食品を届けること。その包材を、もう一度資源としてめぐらせること。そして、その過程を子どもたちや地域の人たちと共有すること。

それらは別々の活動ではなく、ひとつの線でつながっています。

今回の取り組みは、まだ実証の一歩にすぎません。けれど、食を届ける関係性の中で、包材まで資源としてめぐらせようとするこの挑戦には、Umiosが目指すソリューションカンパニーの姿が表れています。

海を起点に、食を通じて、人も地球も健康にする。私たちのアイデンティティは、こうした現場の小さな実践から形になっていくのです。

#2〈アマモ場再生〉の物語

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