現場の声を、経営に直結させる
一昨年、池見会長が全国の工場やグループ会社を回り、タウンホールミーティングを重ねました。私を含め他の役員もその後を引き継ぐ形で、会社が向かう方向を伝える活動を続けてきました。結果として、「変わらなければならない」という理解は、全社的に着実に広がっていると思っています。でも、現場を回っていると、まだどこか「遠い話」と感じている従業員がいることも、実感しています。
私自身、長年水産を中心に事業の最前線で仕事をしてきた人間です。だからこそ、その戸惑いは痛いほどよくわかります。目の前の業務に必死に取り組んでいる中で、「地球規模の課題解決」と言われても、すぐに自分の仕事と結びつかなくて当然です。
その距離は私自身が縮めていこうと思います。自分から働きかけて、経営と現場の距離を縮めて、誰もが意見を言える環境をつくる。「言っていいんだ」と思える空気をつくること。それが実行フェーズに移ったUmiosの、私にとっての最初の仕事だと思っています。
今まで、「マルハニチロって、結局何の会社なの?」と言われることが少なくありませんでした。水産もがんばっている、食品もがんばっている、畜産も農産もある。でも、その集合体がどこをめざしているのか、焦点がぼやけていたのです。それは見え方の問題だけではなく、実際に内側の事業それぞれが、まるで別会社のように縦で動いていました。グループ内に使えるリソースがあるのに、お互いを知らないまま、外部から原料を調達していることすらある。社員ですら、ひとつの会社であるという実感が持ちにくかったのは、ある意味、当然のことだったかもしれません。だからこそ、意識的に人も仕事も混ざり合う取り組みをしたいと考えています。社内の流動性を高めることが、Umiosとして生まれ変わった私たちの、大切な使命のひとつです。横串を刺して、ひとつのチームとして「共創」が生まれ、グループ全体の歯車が噛み合った時の強さは、今とはまったく違うものになると確信しています。
現場や実務を知る者だけが、語れるストーリーがある
Umiosのポテンシャルを最大限に引き出すため、長年続いてきた属人的な働き方を、私が先頭に立って変えていきます。ひとつの商材の職人であることは誇らしい。でも、その専門性を異なる領域と掛け合わせた時にこそ、私たちの会社の本当の強みが引き出されるのだと思っています。
よく取引先の方から「商社との違いは何ですか」と聞かれます。私はいつも、迷わずこう答えてきました。「現場を知っているかどうかです」と。商社の方々は良いものを買ってくる。でも私たちは、つくるところから入っていく。どんな海で、どんな船で、どんな工場で、この商品が生まれたのか。そこには、規格書やデータには絶対に表れない、生産者の熱意や、過酷な気候や、独自の加工技術がある。それを自分の言葉で語れる人間が、私たちの会社にはいるのです。できあがったモノを右から左へ動かすのではなく、つくるところから入り込み、その背景にある物語を自分自身の言葉で語ることができる。これが、私たちの圧倒的な付加価値です。AIが瞬時に見積りを出し、効率化が加速する時代だからこそ、現場のストーリーを語れる人間と企業だけが、本当の意味で選ばれ続けるのだと思っています。
第三創業の実行フェーズが、いよいよ本当に始まりました。私たちがめざすのは、海を起点に、食を通じて社会課題に「解」を出し続けるソリューションカンパニーです。会社の価値を高めながら、社会にしっかりと還元できる企業へ。次の100年も世界から選ばれ続けるために、それが唯一の道だと思っています。