Project
持続可能なタンパク質の供給を目指して
Prologue
未来に向けた新しい事業の創出—
そのために、社内公募として立ち上がった“未来プロジェクト”から生まれたのが「藻類みそ汁~スピルリナ~」だ。
“21世紀の最も優秀なタンパク資源”のひとつとも言われる微細藻類スピルリナに着目し、
味噌汁という製品に落とし込むまでの開発秘話を聞いた。
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M.M
販売・営業業務用流通事業部 事業一課
2005年入社 -
K.M
開発開発部 開発戦略グループ
市販用冷凍食品課
2004年入社 -
M.S
調達水産第二部 タコ・イカ課
2007年入社 -
S.K
品質保証経営企画部 経営戦略グループ
2007年入社 -
N.I
開発調味料乾燥食品事業部 乾燥食品課
2016年入社
Episode. 01 持続可能な新たなタンパク質源を、微細藻類に見出す。
世界的な人口増加や地球温暖化、食生活の変化に伴い、タンパク質の需要が供給を上回る“プロテインクライシス”が、将来起こり得ると言われている。人々の食や健康を支えるタンパク質を持続的に提供しつづけるために、新たなタンパク質源になるものはないのか?その問いに応える可能性として今回見出されたのが、微細藻類であるスピルリナだ。
「微細藻類は、その豊富な有用成分や高い増殖能力から、さまざまな分野での応用が期待されています。数ある微細藻類の中でも、私たちは、“食経験”と呼ばれる『人が食べたことがある実績』が豊富にあり、かつタンパク質の含有量の高いスピルリナに着目しました。」
そう語るのは、多角的な視点での業務用食品販売経験を持ち、 このプロジェクトをリーダーとして牽引するM.M。
「魚や肉、大豆などの既存のタンパク質源には供給の限界があります。それに対し、微細藻類は生産環境を選ばず、環境への負荷も非常に少ないことが利点です。」
一方で、スピルリナには課題も多く存在していた。手の届きやすい価格を実現するための生産コストや藻独特の匂い、加工における扱いづらさなど、解消しなければならない点は多い。そのような中でも、なぜこのプロジェクトに注力するのか?
「タンパク質が無くなってから取り組むのでは遅いのです。まだまだ乗り越えなければいけない課題は多いですが、当社が持つサプライチェーンや食品加工の技術力を活用しながら、みなさんが気づかないうちに仕込んでおこうと。最初からメインの食材として扱うのは難しいかもしれないですが、技術や知見を洗練させながら食材としての地位を格上げしていけたらと思っています。理想はスピルリナでハンバーグをつくることですね。(笑)」

Episode. 02
持ち合わせていなかった選択肢が、
突破口を生み出す。
“スピルリナで何か商品を開発しよう”
この方針は決まったものの、Umiosとしてスピルリナを取り扱った経験はなく、知見は乏しかった。そこで、自社内だけではなく「協業でやろう」と決意し、“MATSURIプロジェクト※”に参画することにしたのだ。
その後、製品化を進めていくなかで試行錯誤していた最中、「大阪・関西万博」の日本館の展示の一部を監修するちとせ研究所から、協賛の話が舞い込んできた。開発を担当するK.Mは、これが製品化の方向性を見出していく一つの契機になったと語る。
「大阪・関西万博では、常温品しか配布できないというレギュレーションがありました。当社は冷凍技術に強みを持っていたのですが、それが封じられてしまったんですよね。そこからは常温の食品に絞り込み、魚肉ソーセージなどを試作しはじめました。」
しかし、ここでスピルリナという食材の持つ壁にぶち当たった。
「スピルリナは熱を加えることによって、綺麗な緑色から茶色く変色してしまうのです。味はおいしかったのですが、加熱後の見た目が悪いと。加熱もできない・冷凍もできないとなると、我々だけの知見ではなかなか前に進まない状況となってしまいました。」
そんなときに、社内からある助言が舞い込んでくる。
「フリーズドライを試してみたらどうか?」
メンバーたちは目から鱗だった。
有志で集まったメンバーたちはそれぞれの専門性を持つものの、いずれもフリーズドライ製品を扱った経験も接点もなかったため、その発想を持ち合わせていなかったのだ。
※世界のバイオ産業を推進するちとせ研究所が中心となって進める、藻類産業の構築を目的とした業界産業横断型の共創イニシアチブ


Episode. 03
さまざまな課題を乗り越え、
“取り組みの種”を見つける。
フリーズドライを試してみようと、このプロジェクトにアサインされたのが乾燥食品事業の担当者であるN.I.だ。これまでの経緯をヒアリングしながら、N.Iは工場の製造担当や開発担当と生産手法を模索しつづけた。
「日本を代表する食品としてなじみがあり、我々の持つ技術を生かせる商品として、フリーズドライの味噌汁をつくろうと決めました。Umiosとして、フリーズドライ製品の取り扱いは、40年以上の歴史があります。しかし、スピルリナという原材料を扱うのははじめてだったので、最初は何もかも手探りでした。冷凍で運ばれてくるのですが、その適切な解凍方法を検討するところからのスタートです。加えて加熱も最小限にとどめるとなると、一筋縄ではいきません。製造プロセスや手法をさまざま検討しながら、フリーズドライ加工後も綺麗な緑色を出せるように試行錯誤しました。」

また、開発過程では、製品の製造・生産方法以外にも苦労があったとM.Sは語る。
「私は、原材料となるスピルリナの調達を担当していました。スピルリナの食材化を成功させたフランスのスタートアップ企業との交渉をしていたのですが、彼らはスタートアップということもあり技術的な開示は多くないなかで、さまざまな条件交渉を持ちかけてきました。それらがUmiosとして問題ない契約なのか、内容に齟齬がないかなど、かなり細かい点まで煮詰める必要がありました。輸入についても、これまで日本に入ってきている事例が少ないので、どのように通関を切れば良いのか、関税はどうなるのかなど、さまざまな調整が求められました。」
さまざまな課題を乗り越え「藻類みそ汁~スピルリナ~」は、無事大阪・関西万博にて配布された。「ただし、この大阪・関西万博は一つのきっかけに過ぎません」。そう語るのは、全体の戦略や方針を練り上げたS.Kだ。
「あくまでも最終的な目標は、新しいタンパク質源を事業化し、持続的に提供することです。そういった意味では、スピルリナのような“取り組みの種”をより多く見出していくことが重要だと思っています。そのために、このようなプロジェクトを推進していくための戦略作りや組織作りにも力を注ぎたいと思っています。」

Episode. 04
一人ではできないことも、
みんなで集まれば実現できる。
「有志で結成されたこのプロジェクトは、将来の事業を見出すだけにとどまらない、さまざまな可能性を秘めています。」と熱く語るのがM.Sだ。
「目の前に与えられた仕事を全うすることも大事ですが、こういった新しいことに挑戦する機会は非常に重要だと感じました。ここには部署や役割といった垣根を越えて集まったメンバーがいて、それぞれの強みや専門性を活かしながら活動をしています。大きな組織になればなるほど、組織間の壁も高くなるものですが、それを取っ払って共創していくことで、思いがけないアイデアに出会うことができましたし、一人では絶対に実現できなかったことを成し遂げることができました。」
開発・研究・調達・生産・流通と、さまざまな強みを持つメンバーが集まり、築き上げたのは「藻類みそ汁~スピルリナ~」という製品だけではない。“挑戦と共創”により新たな価値と未来をつくりだしていくためのUmiosのカルチャーであり、若い世代へのエールだ。
持続可能なタンパク質の提供というビジョンに向かって、今日も挑戦と共創はつづいている。
